µCMMの概要

アリコナより超高精度の寸法測定や幾何公差解析、立壁や孔の内径の測定、透明体や鏡面仕上の表面が測定可能な非接触門型三次元測定機µCMMがリリースされました。
µCMMはアリコナG6やFocusX、アリコナSLでは、測定出来ない形状や材質、寸法測定や幾何公差解析が可能となります。
例えば、従来の非接触三次元測定機では、超高精度の寸法測定やデータムが立壁にある幾何公差解析が必要な金型、面粗度の数値が低い鏡面仕上げ面、光を透過してしまうガラスやレンズなどの透明体は測定できませんでした。
これまでお客様より、そのような対象の測定のご要望を数多くいただいておりましたが、それを実現する測定機は存在しておりませんでした。
アリコナ社ではそういったご要望にお応えするため、金型、立壁や内径、透明体や鏡面を測定することの出来る非接触門型三次元測定機を開発いたしました。
1台4役の非接触門型三次元測定機
以下の4つの要素が重なり合うことで軸の位置決め精度が向上し、1つのデータで2次元、3次元の両方の解析が可能となりました。
1. XYZ軸の各軸に採用されているリニアスケールの精度が向上しました。
2. 本体ベースの材質にグラナイトを採用し、熱変位の小さい構造としました。
3. エアベアリングを採用し、静動性が向上しました。
4. リニア駆動となり、スピードと精度が向上しました。
上記4つの要素により、3次元測定精度の規格であるISO10360-8に準拠する、ワンランク上の高精度な測定機となりました。
また、アルゴリズムの改善とµCMMリアル3D回転ユニットのエンコーダー性能が向上されたことにより、回転対象の測定精度や軸中心の認識精度が向上しました。
回転ユニットを使用すると5軸(回転と傾斜のAB2軸)まで拡張することが可能なため、回転工具やギアの測定精度も向上し、更に様々な形状のサンプルの取り込みも可能となっております。
上述のハードウェア面の精度向上と、アリコナの優秀な解析ソフトウェアによりCMM、輪郭形状測定機、2D画像測定機、粗さ測定機などの要素がすべて含まれた1台4役の万能な非接触3次元測定機となりました。
下に示す図面やドリルの測定例のように、幾何公差(GD&T)を解析することも可能となり、更に離れた個所の解析でも精度が保証されるため、従来よりも劇的に測定解析時間の短縮が見込まれ、工数削減や人件費削減にも寄与いたします。

※軸受け部品の2次元解析(左)、回転工具のシャンク部に対する刃先部の円周振れの解析(右)
立壁や孔の内径を測定できる非接触門型三次元測定機
立壁や孔の内径の測定が可能な立壁面測定(バーティカル・フォーカス・プロービング)機能が標準装備となりました。今まで測定不可能であった90度の壁面も測定可能なため、下記のような立壁面間の幅のような寸法測定も可能となります。これにより、金型の立壁にあるような基準となるデータムも取ることが可能となり、データムを基準とした幾何公差を解析する事も可能になりました。

ストレートな面だけではなく、円筒形状の外径や内径も測定可能となり、円筒度や同軸度も容易に測定することが可能となります。小径の円筒も測定可能で、接触式三次元測定機でプローブが入らない測定にも対応可能です。

また、立壁線測定(フォーカス・プロービング)機能も新しく実装されました。アリコナは焦点深度の浅いレンズを使用しているため、焦点を結ぶ範囲が狭いです。その、焦点が結んだ範囲のみのデータは約2000点以上の点群数となるため、幅測定などの寸法測定に使用することが可能です。立壁面測定は、面で測定するため測定時間がそれなりにかかりますが、この立壁線測定は焦点が結んでいる範囲のみを取り込むため、測定時間が速く、接触式三次元測定機(CMM)のようなスピードで測定を行う事が可能となります。

非接触三次元測定機の垂直の立壁の測定原理とは?
透明体や鏡面仕上げを測定できる非接触門型三次元測定機

通常の非接触門型三次元測定機では、白色LEDのみで測定を行い、センサー精度も現状よりは粗かったため、光を透過してしまう透明体や、光を反射してしまう鏡面仕上げのサンプルを測定することが出来ませんでした。
しかし、µCMMではスマートフラッシュ2.0という独自のアルゴリズムにより、高精度センサーで測定物表面を認識出来るようになり、透明体や鏡面仕上げを測定することが可能になりました。
また、非接触門型三次元測定機の最大のメリットは、測定対象に触れずに測定ができるということです。
近年、表面が超鏡面な測定対象が増加しており、接触式三次元測定機(CMM)では、測定の際に表面に接触することで微小な傷が付いてしまいます。
微小であっても、鏡面仕上げや透明体のサンプルには欠陥になるため、測定後の磨き直しによるキズの除去が必要となり、それによって全体の寸法や形状が変わってしまい、測定したデータが無意味になってしまうことがあります。
しかし非接触門型三次元測定機であれば、傷が付く心配もないため、何度でも測定をすることが可能であり、更にそのまま製品として使用することが出来ます。
そして測定したデータは保存しておくことが出来るため、何度でも解析を行うことが可能です。
初心者でも最先端の測定が可能
測定機を使用したことのない場合でも、CADデータを用いた測定や自動化が可能なソフトウェアや、測定効率を向上させるハードウェアもご用意しております。

CADデータを基に、測定プランを構築することが可能なソフトウェアのMetMaxが、基本ソフトウェアになりました。CADデータに含まれるPMI(Product Manufacturing Information、製品製造情報)を使用して、測定プランを自動で作成することが可能です。
PMIがなくても、MetMax上で作成し、測定プランを構築し、取り込みからレポート化まで自動化することが可能なため、CADCAMの知識があれば、測定を行う事が可能になります。
衝突シミュレーションを行う事も可能で、干渉を起こさないような測定プランを構築することが可能です。
スマートマニュファクチュアリングにも対応しており、測定環境(温度、湿度、油の飛散等)は整える必要はありますが、インラインでの測定も可能です。
レンズチェンジャー(最大4個収納可能)もオプションで装備することが可能で、自動でのレンズ交換が可能となっており、手動での取り換えも可能なため、全種類のレンズをお持ちいただくことも可能です。
全自動測定ユニットPick&Placeを用いLoading/Unloadingポジションをティーチインし、オートメーションマネージャーで測定工程を登録することで、様々な部品を全自動で解析、レポート化することが可能です。Pythonスクリプトを利用しての測定プランや解析の自動化も可能ですし、TCP/IPを使用した外部機器との統合も可能となっております。
トレーサビリティー
PTB(ドイツ国立物理工学研究所)、NPL(イギリス国立物理学研究所)までトレーサブルなキャリブレーションを行っております。
PTBやNPLとは日本の産業技術総合研究所のような機関で、世界的に、特にヨーロッパにおいて権威のある研究所となります。

仕様
測定原理 | 焦点移動法にもとづく非接触三次元測定 |
---|---|
測定テーブルストローク(XY) | 310mm x 310mm |
垂直方向ストローク(Z) | 310mm |
測定機サイズ(W x D x H) | 950mm x 900mm x 1958(Max2288)mm |
測定機重量 | 1250kg |
テーブル駆動速度 | ~100mm/s |
コンプレッサーエアー | 7bar |
照明 | 緑色LED落射照明(グレースケール表示) リングライト(オプション) |
対物レンズの倍率 | 4倍 | 10倍 | 20倍 | 50倍 | |
---|---|---|---|---|---|
最小垂直分解能 | nm | 85 | 30 | 20 | 10 |
ワーキングディスタンス | mm | 30 | 17.5 | 19.0 | 11 |
視野範囲(X方向) | nm | 3230 | 1320 | 660 | 260 |
視野範囲(Y方向) | nm | 3230 | 1320 | 660 | 260 |