ボールorローラーブッシュ構造でのリテーナーのズレ対策

リテーナーのズレ対策としてはスプリングやサークリップを使ったズレ対策は今まで何度か紹介しましたが、ボールブッシュ・ローラーブッシュタイプのリテーナーズレ対策を紹介します。

以下はサブガイドのダイ側を想定したリテーナーとブッシュの組み合わせです。実はアガトンの射出成形金型向けのローラーガイドピン「AGS」(Agathon Guiding System)と同じ構造となっています。こういったガイドはプレス金型でも応用が可能で、トランスファープレスやロングストロークの順送プレスなど搬送装置などの干渉をさけたい、機上でのメンテ性も考慮したいという時に向いています。ダイプレート上に障害物が減るため非常に作業性が良いのが特徴となります。

ブッシュとリテーナーの選択方法

リテーナーはどのようにストロークし位置決めするか

ガイドポストが下降しガイドブッシュが入ると、ガイドブッシュ、ベアリング、ガイドポストでゼロクリアランスとなり上型が位置決めされます。リテーナーは上型のガイドポストのストロークに対し1/2動きます。ダイプレートの厚みとストロークによって決定します。

プリロード位置を考える

もしガイドポストがダイプレートに50mm挿入されるとします。プリロードが掛かる位置からリテーナーが動きますのでサークリップの設置位置を端面から5mm,リテーナーの1列目がサークリップから5mm下と考えると挿入してから10mmの位置でプリロードが掛かります。そして40mm挿入されるとリテーナーは20mm動きます。上記を踏まえてブッシュの長さを決定する式を考えます。

ブッシュの長さ リテーナーの長さを決定する

ブッシュとリテーナーの長さを決定する式は

ブッシュの長さ=リテーナー長さ+((挿入深さ-10mm)÷2)

となります。上記の式に当てはめると

ブッシュの長さ=リテーナー長さ+((50mm-10mm)÷2)

ブッシュの長さ= リテーナー長さ +20mm

仮にブッシュの長さを60mmとしますと

ブッシュ60mm=リテーナー長さ+20mm

リテーナー長さ = ブッシュ60mm -20mm

リテーナー長さ=40mm

となります。スプリングの最低長さですが、ブッシュ内で押している長さの2倍以上は取るようにします。

最低スプリング長さ=(ブッシュ長さ-リテーナー長さ+サークリップ設置深さ)x2となり

最低スプリング長さ =(60mm-40mm-5mm)x2

最低スプリング長さ = 30mm以上

となります。ただ長いスプリングの方がヘタリがないので、ダイプレートの許容範囲内でスプリングの長さは
長く使える方が長期的には交換サイクルを伸ばせます。

メンテナンスと摩耗監視方法

ボールorローラーブッシュのメンテナンス

リテーナーには摩耗対策にグリスが必要です。組付け前にリテーナーにグリスを塗布し、組付け後は定期的にガイドポストにグリスを定期的に塗るようにします。

ボールorローラ―ベアリングの摩耗監視方法

ボールとローラーはプリロードが掛かるとストローク量の1/2動くようになっています。ガイドポストが挿入されて
リテーナーが下にストロークしていれば問題ありません。ガイドポストを挿入してもリテーナーが下にストローク
しなければリテーナーは交換時期となります。

どういう金型に向いているか?

トランスファープレスやワークが大きい金型ではガイドのスペースが取りづらいため、ストリッパーガイドピン
サブガイドの位置決めとするケースが非常に多く見受けます。ただストリッパーガイドピンではガイドピンとガイドブッシュのクリアランスがある為、パンチの位置決めが不十分です。金型によってはパンチのチッピングが頻発し定期的にパンチの再研磨をしなければならくなるというケースがあります。下記ボール・ローラーブッシュを使う事でサブガイドの位置決めおよびパンチの位置決めがされるためパンチの挙動改善&チッピング対策にもなります。

関連リンク

vol.5 プレス加工とリテーナーのズレ対策① ショートストローク・高速プレス加工のリテーナーズレ

vol.6 プレス加工とリテーナーのズレ対策② ロングストローク金型のリテーナーのズレ対策① 

vol.7 プレス加工とリテーナーのズレ対策③ ロングストローク金型のリテーナーのズレ対策②

vol.8 プレス加工とリテーナーのズレ対策④  イモネジを用いたスプリング高さ調整法

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