ガイドブッシュの選び方|標準ストレート・肉厚・フランジタイプをどう使い分ける?

ガイドブッシュには、標準的なストレート(薄肉)タイプをはじめ、 肉厚タイプやフランジ付きタイプなど、さまざまな形状があります。
選定する際は、価格やサイズだけでなく、 まず必要なブッシュ長さがプレート内に収まるかどうかを 確認することが重要です。
プレート内に十分収まる場合には標準ストレートタイプ、 プレートから突出する場合には肉厚タイプやフランジ付きタイプが適しています。
本記事では、なぜこのように使い分けるのかを、 アガトン社のFEM解析による荷重分布と軸ズレの違いをもとに解説します。

ガイドブッシュは何を基準に選べばよいのか?

ガイドブッシュを選定する際、まず確認するのはガイドポスト径や必要なブッシュ長さです。 そのうえで、同じ寸法に対応するブッシュが複数ある場合、 「価格が安いから」「サイズバリエーションが多いから」といった理由で、 標準的なストレートブッシュを選ぶケースもあるかもしれません。
しかし、ブッシュ形状を選ぶ際には、価格やサイズだけでなく、 必要なブッシュ長さとプレート厚の関係を確認することが重要です。
特にポイントとなるのが、 ブッシュ全体をプレート内に収めることができるかどうかです。
ブッシュ全体がプレート内に収まる場合、ブッシュ外周をプレートによって十分に支持することができます。 このような条件では、標準的なストレートブッシュが合理的な選択となります。
一方、必要なブッシュ長さに対してプレートが薄く、 ブッシュの一部がプレートから突出する場合には、プレートによる支持を受けない部分が生じます。 このような条件では、標準ストレートタイプをそのまま使用するのではなく、 肉厚タイプやフランジ付きタイプなど、突出部の支持性を考慮したブッシュ形状を検討する必要があります。
つまり、ガイドブッシュを選ぶ際には、単に「どのサイズが使えるか」だけを見るのではなく、 そのブッシュを金型の中でどのように支持するのかまで考えて選定することが重要です。

プレートからブッシュが突出すると何が起こる?

ガイドブッシュがプレート内に収まっている場合、 ブッシュ外周はプレートによって支持されています。 そのため、ラジアル方向から荷重を受けた際にも、 プレートがブッシュの変形を抑える役割を果たします。
一方、必要なブッシュ長さに対してプレート厚が不足し、 ブッシュの一部がプレートから突出すると、 その突出部分はプレートによる外周支持を受けられません。
この状態でラジアル荷重やモーメント荷重が加わると、 支持されていない部分が変形しやすくなり、 ガイドポストとブッシュの軸にズレが生じる可能性があります。
軸ズレが生じると、ブッシュ内部のボールやローラーに荷重が均等にかからず、 一部のベアリングに負荷が集中します。 こうした荷重集中を抑えるため、 ブッシュがプレートから突出する場合には、 肉厚タイプやフランジ付きタイプなど、 支持性を考慮した形状を検討します。
重要なのは、 「突出しているから使用できない」ということではなく、 突出する場合には、その部分の変形をどう抑えるかを考える必要がある という点です。

FEM解析で見るブッシュ支持構造による違い

前章では、ガイドブッシュがプレートから突出すると、 突出部分がプレートによる外周支持を受けられなくなり、 ラジアル荷重に対して変形しやすくなることを説明しました。
では、ブッシュの支持構造によって 実際にどの程度の違いが生じるのでしょうか。
アガトン社では、ガイドブッシュに 最大600Nのラジアル荷重を加えた条件でFEM解析を行い、 標準ストレートブッシュをプレートから突出させた場合、 肉厚とした場合、 フランジ付きとした場合の荷重分布と軸ズレを比較しています。

FEM解析条件

アガトン社では、ガイドブッシュに 最大600Nのラジアル荷重を加え、 ブッシュの支持構造による荷重分布と軸ズレの違いを比較しています。
荷重条件 最大ラジアル荷重:600N
比較構造 標準ストレートタイプ・突出 / 肉厚タイプ / フランジ付きタイプ
確認項目 ベアリングへの荷重分布 / ポスト軸とブッシュ軸のズレ

プレートから突出した
標準ストレートタイプ

標準ストレートブッシュをプレートから突出させた場合のFEM荷重分布解析
標準ストレートブッシュをプレートから突出させた場合のFEM補足解析図
ガイドポスト軸とブッシュ軸のズレ 16.1 μm

標準ストレートブッシュがプレートから突出すると、 突出部分はプレートによる外周支持を受けられません。 ラジアル荷重によってブッシュが変形しやすくなり、 一部のベアリングに荷重が集中する状態が生じます。

肉厚タイプ

肉厚ブッシュのFEM荷重分布解析
肉厚ブッシュのFEM補足解析図
ガイドポスト軸とブッシュ軸のズレ 9.3 μm

肉厚構造にすることで、 ラジアル荷重によるブッシュの変形が抑えられます。 その結果、標準ストレートブッシュを突出させた場合よりも 軸ズレが小さくなっています。

標準・突出構造の16.1μmと比較して 軸ズレ量は約42.2%小さい

フランジ付きタイプ

フランジ付きガイドブッシュのFEM荷重分布解析
フランジ付きガイドブッシュのFEM補足解析図
ガイドポスト軸とブッシュ軸のズレ 12.2 μm

フランジ部によってブッシュを支持することで、 標準ブッシュをそのまま突出させた場合よりも 変形を抑えています。 FEM解析でも軸ズレ量の低減が確認できます。

標準・突出構造の16.1μmと比較して 軸ズレ量は約24.2%小さい

FEM解析から重要なのは、 「肉厚ブッシュの方が常に優れている」ということではありません。
ブッシュがプレートによってどのように支持されているかによって、 ラジアル荷重を受けた際の変形量や ベアリングへの荷重分布が変わるという点です。 ブッシュ全体をプレート内で十分に支持できる場合は標準ストレートタイプ、 プレートから突出する場合は肉厚タイプやフランジ付きタイプなど、 取付条件に適した構造を選定することが重要です。

※数値はアガトン社のFEM解析条件における比較結果です。 実際の変形量は、荷重、ブッシュ長さ、突出量、プレート厚、 ポスト径などの使用条件によって異なります。

FEM結果から重要なのは、 ブッシュ形状そのものの優劣ではなく、プレートによる支持条件によって 変形量と荷重分布が大きく変わるという点 です。

標準ストレート・肉厚・フランジ付きはどう使い分ける?

FEM解析から、ガイドブッシュの変形やベアリングへの荷重分布は、 ブッシュ形状だけでなく、プレートによる支持条件によって変わることが分かります。
そのため、ガイドブッシュを選定する際は、 まず必要なブッシュ長さがプレート内に収まるかを確認し、 その取付条件に適した形状を選びます。
ここでは、標準ストレートタイプ、肉厚タイプ、 フランジ付きタイプの基本的な使い分けを整理します。

標準ストレートタイプ|プレート内に収まる場合

必要なブッシュ長さがプレート内に十分収まり、 ブッシュ外周をプレートによって支持できる場合には、 標準ストレートタイプが基本的な選択肢となります。
ブッシュ全体がプレート内で支持されていれば、 ラジアル荷重を受けた際にもプレートがブッシュの変形を抑えるため、 標準ストレートタイプを使用することができます。
また、標準ストレートタイプは比較的安価で、 サイズバリエーションも豊富というメリットがあります。 重要なのは、 「安価だから標準ストレートを選ぶ」のではなく、 プレート内で十分に支持できるという条件を確認したうえで、 価格やバリエーションのメリットを活かすこと です。
アガトン製品例:7801シリーズ
標準ストレートタイプのガイドブッシュをプレート内で支持した構造
ブッシュ全体をプレート内に収め、
外周をプレートで支持

肉厚タイプ|プレートから突出する場合

必要なブッシュ長さに対してプレート厚が不足し、 ブッシュの一部がプレートから突出する場合には、 肉厚タイプを検討します。
プレートから突出した部分は、 プレートによる外周支持を受けることができません。 そのため、標準ストレートブッシュをそのまま突出させると、 ラジアル荷重やモーメント荷重によって ブッシュが変形しやすくなります。
肉厚タイプは、 ブッシュ自体の肉厚を大きくすることで、 プレートから突出した部分の変形を抑える構造です。 ストレート形状を維持しながら、 突出部分の変形を抑えたい場合の選択肢 となります。
前章のFEM解析でも、 肉厚ブッシュ、またはブッシュ全長をプレート内で支持した構造では、 標準ストレートブッシュを突出させた構造よりも ガイドポスト軸とブッシュ軸のズレが小さい結果となっています。
アガトン製品例:7820シリーズ
肉厚タイプのガイドブッシュをプレートから突出させた構造
プレートから突出する部分の変形を、
ブッシュの肉厚によって抑える

フランジ付きタイプ|フランジで支持する場合

プレートからブッシュを突出させる必要があり、 取付構造としてフランジ部でブッシュを支持することが適している場合には、 フランジ付きタイプを検討します。
フランジ付きタイプは、 フランジ部を利用してブッシュを支持することで、 標準ストレートブッシュをそのまま突出させた場合よりも ブッシュの変形を抑えやすい構造です。
前章のFEM解析でも、 フランジ付き構造では薄肉ブッシュを突出させた場合よりも ガイドポスト軸とブッシュ軸のズレが小さくなっており、 フランジによる支持がブッシュの変形抑制に有効であること が確認できます。
ただし、肉厚タイプとフランジ付きタイプのどちらが適しているかは、 プレート形状、必要なブッシュ長さ、取付方法、 周辺スペースなどの条件によって異なります。
アガトン製品例:7851・7840・7301シリーズ
フランジ付きガイドブッシュをフランジ部で支持した構造
フランジ部でブッシュを支持し、
突出部分の変形を抑える

ガイドブッシュ形状の基本的な使い分け

取付条件 基本となるタイプ 選定の考え方 アガトン製品例
ブッシュ全体がプレート内に収まる 標準ストレート プレートによる外周支持を利用し、ブッシュの変形を抑える 7801シリーズ
ブッシュの一部がプレートから突出する 肉厚ストレート ブッシュ自体の肉厚によって、突出部分の変形を抑える 7820シリーズ
プレートから突出し、フランジ支持が適する フランジ付き フランジ部を利用してブッシュを支持し、突出部分の変形を抑える 7851・7840・7301
※上表は基本的な選定の考え方を整理したものです。
ここまで見てきたように、 ガイドブッシュの形状は、価格やタイプ名だけで決めるものではありません。
必要なブッシュ長さがプレート内に十分収まる場合は標準ストレートタイプ、 プレートから突出する場合は、その突出部分をどのように支持するかを考え、 肉厚タイプやフランジ付きタイプを検討します。
大切なのは、それぞれのタイプを「高性能な順」に考えるのではなく、 金型内での支持条件に合った構造を選ぶこと です。

まとめ|ガイドブッシュは支持条件から選ぶ

ここまで、ガイドブッシュの形状によって支持条件がどのように変わるのか、 また、その違いがブッシュの変形やベアリングへの荷重分布にどのように影響するのかを見てきました。
ガイドブッシュを選定する際に重要なのは、 「どのタイプが高性能か」ではなく、金型内でブッシュがどのように支持されるか という点です。
必要なブッシュ長さとプレート厚の関係を確認し、 プレート内で十分に支持できるのか、 それとも突出部分を別の構造で支持する必要があるのかを考えることで、 選定の方向性が見えてきます。
POINT 01
プレート内に収まるなら標準ストレート

必要なブッシュ長さがプレート内に十分収まり、 ブッシュ外周をプレートで支持できる場合には、 標準ストレートタイプが基本的な選択肢 となります。 この条件を満たしたうえで、 価格やサイズバリエーションのメリットを活かします。

POINT 02
突出する場合は支持方法を考える

ブッシュがプレートから突出すると、 突出部分はプレートによる外周支持を受けにくくなります。 その場合は、 肉厚タイプやフランジ付きタイプなど、 突出部分の変形を抑えられる構造 を検討します。

POINT 03
「高性能な順」ではなく「条件に合うか」で選ぶ

標準ストレート、肉厚、フランジ付きは、 単純な性能の優劣で使い分けるものではありません。 金型内での支持条件に合った構造を選ぶこと が重要です。

ガイドブッシュを選定する際は、 最初に価格や製品シリーズを見るのではなく、 まず 「必要なブッシュ長さがプレート内に収まるか」 「プレートから突出する部分をどのように支持するか」 を確認することが重要です。

そのうえで、 金型内の支持条件に適した標準ストレート、 肉厚、フランジ付きの各タイプを選定します。

ガイドブッシュは、価格ではなく支持条件から選ぶ。

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