射出成形の成形精度
近年、射出成形(プラスチック成形)の成形精度はより厳しくなっています。
通常モールドベースの位置決め部品は可動側・固定側(キャビコア)に設置しますが、より高精度な成形を実現するため、最近では入れ子(カセットとも呼ばれる)をフローティング構造にし、そこに位置決め部品を設置したいというご相談が増えています。
そこで、ここではフローティング構造の入れ子へのアガトン社製高精度位置決め部品「RFCS」の適用をご紹介します。
高精度位置決め部品「RFCS」
射出成形金型用 高精度位置決め部品「RFCS」は、位置ズレ補正機能、ゼロクリアランスによる高精度位置決め、優れた部品寿命など、様々な特長を有しています。
入れ子のフローティング構造へのRFCSの適用では、位置ズレ補正機能が大きく貢献します。
RFCSの特長や仕様につきましては右のバナーよりご覧いただけます。
RFCSの位置ズレ補正機能
RFCSは最大0.15mmまでのズレを補正することが可能です。
例えば、コア側とキャビティ側にそれぞれブッシュとピンを位置精度±0μmで設置し、その後自重等が原因でキャビティ側が数十μm下がってしまった場合、RFCSにより初期位置である位置精度±0μmに補正することが可能となります。
※組付け時のキャビコアの位置(初期位置)が0.15mmまでズレていてもいいわけではありません。
この位置ズレ補正機能の実現は以下の3つの機構により実現できます。
リテーナ部は径方向に若干フリー(遊びがある)状態であるため、上図のようにコア側とキャビティ側がズレていてもリテーナがブッシュに挿入されます。
ピン先端にテーパ加工が施されているため、挿入時のベアリングへの衝撃を軽減できます。
ブッシュの導入部にテーパ加工が施されているため、挿入時のリテーナやベアリングへの衝撃を軽減できます。
入れ子のフローティング構造
入れ子に位置決め部品を設置するための最大のポイントは、入れ子をフローティング構造にすることです。
入れ子をフローティング構造にすることで、位置決め部品が挿入されるまでは(モールドベースのポケットと入れ子のクリアランスの範囲内で)キャビコアの入れ子同士の位置はズレていても、位置決め部品が挿入されると入れ子同士の位置ズレは0となります。
フローティング構造へのRFCSの適用
フローティング構造の入れ子は、従来のストレートブロックの場合は位置決め部品が挿入されるとカジリが発生してしまうため、テーパーブロック形状にするなどの対策が求められます。
しかし、テーパーブロック及びテーパーピンはテーパー部が固定側と可動側のズレによりペアとなる位置決め部品に接触してしまうため通常の使用方法より摩耗速度は早くなります。
一方、RFCSはベアリングで位置決めする位置決め部品であり、ベアリングが転がりながら摺動するため、他の部品と比べて摩耗を大幅に低減することができます。
RFCSを使用する上での注意点
潤滑剤
RFCSはベアリングを使用しているため、ベアリング部分へのグリスは必須となります。
入れ子に設置する場合は成形部が近いため、グリスの塗布には十分にご注意ください。
金型温度
RFCSの耐熱温度は7990,7992シリーズで150℃、7993シリーズで170℃となります。
入れ子に設置する場合は設置箇所の温度にご注意ください。
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