長いリテーナーとブッシュのススメ

リテーナーの剛性は鋼球やローラーの数で決定します。ダイハイトやストローク、板厚の関係で制約はありますが、リテーナーやブッシュの長さを伸ばすことが出来るのなら伸ばしてしまった方が金型のパフォーマンスに効果があります。下記はアガトンのφ32のボールリテーナーの長さとボールサイズ、許容負荷についてまとめた表です。

品番径 mm長さmmボール数(個) 許容剛 (N)7611.032.045の剛性を100とした時の剛性の比率3762Nの負荷が加わった時の鋼球1個あたりの負荷
7611.032.045 32  451443762100%26.13N/pcs
7611.032.052 32   521624232112%23.22N/pcs
7611.032.065 32   652165643150%17.42N/pcs
7611.032.074 32   742526583175%14.93N/pcs
7611.032.080 32   802707054188%13.93N/pcs
7611.032.090 32   903067994212%12.29N/pcs
7611.032.100 32   1003428935238%11.0N/pcs
7611.032.110 32   1103789875262%9.95N/pcs
7611.032.121 32   12141410816288%9.09N/pcs

上記の表をご覧頂くとリテーナーは長くなった方がボールの数も増え許容剛性が増すほか、ボール1個当たりに掛かる荷重も減る為、リテーナーは長いものを使う方が有利という事が分かります。

φ32という径は電子部品向け金型ではメインガイドとして使われ、自動車向けの大型の金型ではサブガイドとして使われます。以下は使われる頻度の高いφ32のガイドの事例です。

メインガイドはリテーナーやブッシュの長さについては自由度が高い場所になるので上記のように変えただけでも
リテーナーの許容負荷は上がります。またリテーナーとブッシュが長くなる事でガイドポストのたわみ剛性も上がります。

価格を抑えたい、重量を小さくしたコンパクトな金型にしたいという理由で短いリテーナーやブッシュを使用される話をよく聞きます。ガイドは家に例えると柱のような存在です。家の柱を細くすると耐震性が下がります。ガイドもガイド剛性を下げるとパンチやダイのチッピングが起きたり、リテーナーの交換サイクルが早くなったりと負の影響も出てきますので、金型の設計可能範囲内で長いリテーナーとブッシュを使う事をお勧め致します。

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