RFCSで高精度な成形と大量生産のコストを削減するコツ

前章では失敗事例について紹介しました。RFCSを適切に運用すれば、精度と寿命を両立し、従来の位置決め部品による運用よりも大幅なコストダウンが可能です。そのために考慮すべきポイントは以下の2点です。

・ローラー(ベアリング)の潤滑
・ローラー(ベアリング)の耐荷重計算

RFCSの基本的なメンテナンスはグリスアップです。用途・環境に合った潤滑剤の選定に加え、ベアリングに掛かる荷重も考慮することで、剛性が確保され部品寿命は大きく向上します。

適切な潤滑剤を用いる

RFCSのローラー(ベアリング)には潤滑剤の使用が必須です。無潤滑(ドライ)での使用は推奨されません。潤滑剤を使用せずに運用した場合、RFCSのローラーが早期に摩耗し、部品寿命は著しく低下します。潤滑剤の有無により、寿命に100倍以上の差が生じるケースもあります。必ずグリースを使用してください。

ベアリング用グリースには極圧添加剤が含有されています。潤滑剤を選定する際は、用途に「軸受け」と記載されているかを確認してください。

クリーンルーム用途などでグリースが使用できないケースがあります。そうした場合、食品工場などで使用されるNSF-H1規格の潤滑剤が、クリーンルームでも適用可能なことがあります。当社取り扱い品では、NOKクリューバー社のフッ素系グリース「BARRIERTA L55/2 H1」や「Klübersynth UH1 14-151」がNSF-H1規格に対応しています。

金型用潤滑剤としてポピュラーなメーカー

射出成形金型用途で使用される潤滑剤メーカーの一例です。

・NOKクリューバー
・ENEOS
・協同油脂
・コスモ石油
・ジーアールピー
・昭和シェル石油
・住鉱潤滑剤
・東レ・ダウコーティング
・中京化成工業
・ルーブエース東京
・山一化学
・出光興産
・モービル石油
・日本グリース
・エッソ石油
(順不同、敬称略)

上記のメーカーは軸受け用途の潤滑剤を扱っていますが、射出成形金型では温度域や高耐荷重などの条件が加わるため、使用条件に合わせた選定が重要です。ガイドピンやスライドコアで使用しているグリースを流用する場合も、「軸受け」用途であることを確認してください。

金型温度に合わせたグリースを選択する

潤滑剤の性能は使用温度によって大きく左右されます。フッ素系グリースは耐熱性が高く、高温金型でも揮発が少ないことから採用例が多く見受けられます。一方で、金型温度が比較的低い環境では、他のグリースの方が耐摩耗性に優れる場合があります。

金型用途で使用されるグリースの種類例は以下の通りです。

・鉱油グリース
・リチウムグリース
・ナトリウムグリース
・カルシウム混合基グリース
・ウレア(ジウレア)グリース
・フッ素(PTFE)グリース
・リチウムナトリウムグリース
・ベントングリース
・ジエステルグリース
・炭化水素系グリース
・アルミニウムコンプレックスグリース

金型用途のおすすめグリース

耐摩耗試験の結果、耐摩耗性能が最も良好だったのはリチウム系グリースです。ただし、エンプラ等で金型温度が高い環境では潤滑剤の限界温度域に近づくため、130~200℃の環境下ではフッ素系グリースが揮発が少なく、高温金型に適しています。また食品・医療系容器などの用途では、アルミニウムコンプレックス系グリースが適するケースがあります。

推奨
温度域
製品名基油/増ちょう剤蒸発損失
(99℃×22h)
※2
使用温度
範囲
外観
~130℃Kluberplex BEM 41-141鉱油・合成炭化水素油/
リチウムコンプレックス石けん
0.2 wt%-40~150℃黄色
(非透明)
130~170℃BARRIERTA L55/2 H1※1フッ素油/PTFE0.1 wt%30~260℃
(非透明)
~100℃Klübersynth UH1 14-151合成炭化水素油/
アルミニウムコンプレックス石けん
0.5 wt%-45~120℃ベージュ
(非透明)

※1 NSF-H1規格:食品への偶発的接触が許諾される潤滑剤
※2 JIS K2220.10規格による測定方法

揮発しにくい潤滑剤は「非常に長く使える」と思われがちですが、揮発しなくても耐摩耗性は徐々に低下します。定期的なグリスアップは不可欠です。

フッ素以外の潤滑剤を用いる場合、揮発に注意

射出成形用途ではフッ素系潤滑剤が採用されるケースが多く見受けられます。耐熱性が高く、揮発が少ないためです。例えばBARRIERTAは、150℃で200時間の蒸発量が0.1%と小さいことが特長です。ただし低温域では、耐摩耗性に優れるリチウム系グリースなどが適する場合があります。またフッ素系以外の潤滑剤では揮発が避けられないため、固化(硬化)やグリース切れに注意しながらグリスアップを行ってください。固化したグリースの除去は容易ではないため固化する前にグリスアップするのが理想です。

耐荷重に余裕のあるサイズ、数量を選択する

RFCSにはサイズごとに耐荷重が設定されています。定格耐荷重いっぱいで使用するのではなく、耐荷重の約70%以下で使用することで、ローラーベアリング(以下,ローラー)1個当たりの負担が軽減され寿命が延びます。これは安全係数を設定する考え方です。なおローラーに掛かる荷重は取付位置によって変化します。

安全係数の計算は、RFCSベースで考えるかモールドベース重量ベースで考えます。

・RFCSベース:想定可動側重量=(位置決め時耐荷重×使用個数(個))×安全係数
 計算例:(1400N※×2)×0.7=1960N=1960÷9.8=200kg
 ※7990.015.049の位置決め時耐荷重

・モールドベース重量ベース:想定RFCS耐荷重=(可動側モールドベース重量÷安全係数)÷使用個数
 計算例:(180kg÷0.7)÷2=257kg÷2=128kg×9.8=1254N →7990.015.049が適合

RFCSの耐荷重はサイズによりピン径とローラー数が変わるため、サイズ表を参照して判断します。サイズはピン径ベースでφ10mm~φ50mmまで展開されており、サイズが大きくなるほどローラー数が増え、耐荷重も向上します。一方で取付スペースが厳しいケースもあるため、3D CADデータで配置検討することを推奨します。参考:RFCS7990シリーズの寸法、耐荷重

下記はユーザー様での実例です。

事例使用RFCS金型重量RFCS1個当たり耐荷重使用数量耐久ショット数
ケース①7990.015.049180kg(片側90kg)位置決め時:1400N
型締め時:4700N
2個400万~500万ショット
ケース②7990.015.049180kg(片側90kg)位置決め時:1400N
型締め時:4700N
4個800万~1000万ショット以上

ローラーに掛かる荷重を低減することは、潤滑剤の高負荷環境を緩和することにもつながります。金型上で設置スペースの確保は容易ではありませんが、可能であれば余裕のあるサイズ・数量での使用を推奨します。

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