ガイドブッシュの接着 接着強度を高めるコツ

負荷が掛かる加工において、ブッシュの接着が弱い場合はブッシュが取れたりズレたりしてしまうことがあります。このような状況は、プレス機と金型の位置精度を悪化させることにつながり、非常に慎重な接着作業が必要です。ブッシュの接着強度を高めるためには、以下の二つの準備が重要です。これらを徹底することで、十分な接着性が得られます。

ブッシュや穴をしっかりと洗浄する

パーツクリーナーやディグリーザ―を使用して油分などを取り除きます。パーツクリーナーは揮発性が高く、ディグリーザーは揮発性が低いという違いがあります。ディグリーザーは揮発性が低い分、浸透性が高いため洗浄成分が奥まで有効に作用します。そのためディグリーザーを推奨します。ヘンケル社では接着剤専用のディグリーザーSF7065があります。洗浄後は、布で残留のディグリーザーを拭き取ります。

接着剤を徹底的に塗布する

ブッシュや穴に使用する接着剤の充填密度を上げることで、接着強度を向上させることができます。そのため、ブッシュと穴の両方に接着剤を塗布します。手に付着するため、はみ出ることを恐れて少なめに塗布してしまうと、接着強度が落ちてブッシュが外れてしまう可能性があります。仮にブッシュを組み付けた後に接着剤がはみ出してしまった場合でも、嫌気性接着剤であれば空気中では硬化しないため、余分な接着剤を処理することができます。また、接着剤の塗布量にバラつきが生じることを避けるためには、定量塗布のためのハンドポンプや精密ディスペンサーを使用することを推奨します。定量塗布により、穴ごとの接着強度にバラつきが出ることを防ぐことができます。

更に接着強度を上げる工夫

上記の手順が基本でしっかりとした接着強度を得られますが、更に強度を上げる工夫を紹介します。いずれも接触面積を広げる方法となります。

軸付き砥石で穴とブッシュの表面を粗す

リューターや工具用ドリルに軸付き砥石を取り付けて穴の内側やブッシュの外径を粗します。粗すとは細かいキズをつける事を指します。#100~#200程度の番手を用います。プレートの材質が生材(プリハードン鋼)であればアルミナ砥粒の軸付き砥石、焼入れ鋼の場合はCBNの軸付き砥石を利用します。穴の表面を傷つけるのが目的ですが穴径を広げない様に気を付けます。電着ダイヤなどは削れ過ぎてしまうので使用は避けます。ブッシュは焼入れ鋼ですので傷をつける目的で軸受き砥石を使う場合はCBNが向いています。

ブッシュに溝を増やす

多くのガイドブッシュがSUJ2(高炭素クロム軸受鋼)が用いられます。そのためCBNなどの焼入れ鋼用の砥石を用います。表面積を広げるという観点からすると細溝を多く入れるのが有効となります。

ブッシュ外径をブラスト加工で粗す

ブラスト加工で砥粒をブッシュ表面に吹き付けて使う事で平滑面だったところに凹凸を作り表面積を広げます。以下は研磨剤を用いてブラストの粗し処理をしたブッシュとなります。表面積を広げる効果は高いのですが接着剤がブラスト処理後の表面部に浸透すると充填密度が低下する恐れがあるので接着剤は多めに塗布するようにします。

一番簡単でかつコストの掛からない方法は軸付け砥石を使う方法です。溝入れやブラストなどの方法は幅の狭い砥石やブラストなどの設備が社内ではないようであれば外注で加工します。砥石や研磨剤などの消耗品が伴う為、一定のコストが掛かります。
もし金型が順送型ではなく部品数の少ない単発プレス型ということであれば、ガイドブッシュと取付穴のクリアランスを両側0.05mm(片側0.2~0.3)よりも小さくすることで接着強度を上げるという方法もあります。クリアランスを小さくすると接着剤の硬化時間が短くなるため、組付け部品数の多い順送金型には向きませんが、部品の少ない単発金型であれば、短時間で接着剤塗布済みブッシュを金型に組付ける事が出来るため、接着剤の硬化時間が短くても対応可能です。

金型の構成や求められる剛性に応じて接着方法を考えましょう。

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