潤滑剤の重要性
ボールやローラーのベアリングを使うボール/ローラーガイドには潤滑剤は欠かせない存在となります。
潤滑剤を使用せずにボール/ローラーガイドを使用すると、ベアリング寿命が1/10になってしまったという報告もあります。
一方で、潤滑剤を変えるだけでベアリング寿命が2倍になったという報告もあります。
また、潤滑剤はどの金型でも同じというわけでなく、工場のメンテナンスサイクルや温度条件、荷重など様々な要素により最適な潤滑剤は変わります。
ここでは最適な潤滑剤を選定するための潤滑剤の基礎をご紹介します。
潤滑剤の組成
潤滑剤には一般的に「オイル」と「グリス」がありますが、基油に添加剤を加えたものを「オイル」、オイルに増ちょう剤を加えたものを「グリス」と呼びます。
基油
オイルやグリスの基材となる油です。
基油は鉱油と合成油に大別され、最も多く使用されているのが鉱油となります。
増ちょう剤
グリスの成分で、液体潤滑剤の中に分散して三次元的構造を作り、半固体する作用を持つ物質です。
石けん系と非石けん系があり、増ちょう剤はスポンジのようにオイルを保持し摺動部にオイルを供給します。
潤滑剤の特徴
潤滑剤の特徴は以下となります。
オイル | グリス | |
状態 | 液体 | 半固体 |
特徴 | 潤滑部に保持不可 連続給油設備必須 | 潤滑部に保持可 簡単なシール機構 |
冷却性 | 冷却機能あり | 冷却機能なし |
潤滑性 | 摩擦損失 小 | 摩擦損失 大 |
潤滑剤の添加剤
潤滑剤の添加剤には以下のような種類があります。
種類 | 効能 |
酸化防止剤 | 酸化劣化の防止 腐食性物質の生成を抑制 |
極圧剤 | 焼き付きを防止 |
油性剤 | 摩擦や摩耗を減少させる |
防錆剤 | 金属表面の錆の発生を防止 |
固体潤滑剤 | 油膜切れ時の焼き付きを防止 |
その他 | 粘度指数向上剤 流動点降下剤 消泡剤など |
アガトンガイドの推奨潤滑剤
Microlube GB0
プレス加工を中心とした使用に最適な潤滑剤であり、ベアリングを長寿命化させる効果があります。基油に鉱油を使用し、増ちょう剤にリチウム石けん、ケイ酸塩を使用しています。
赤褐色半透明で塗布サイクルが見極めやすい特徴があります。
一方で、使用温度範囲は-25~150℃であり、一部の高温度での射出成形金型などの用途では注意が必要となります。
詳しい仕様は右のバナーより製品ページをご覧ください。
Kluberplex BEM41-141
耐摩耗性が高く、ローラーなど偏荷重が掛かる用途に最適な潤滑剤です。基油に鉱油を使用し、合成炭化水素油を使用し、増ちょう剤にリチウムコンプレックス石けんを使用しています。
またショートストローク環境で発生するフレッチング摩耗の防止に高い性能を発揮します。
Microlube GB0と同様に、高温での射出成形金型などの用途では注意が必要となります。
詳しい仕様は右のバナーより製品ページをご覧ください。
BARRIERTA L55/2 H1
高温度環境下で非常に優れた耐熱性を持つフッ素系潤滑剤であり、食品に偶発的に接触する可能性のある箇所に使用できるNSF H1グレードとなります。基油にフッ素油を使用し、増ちょう剤にPTFEを使用しています。
使用温度範囲も-30~260℃であり、高温度での射出成形金型にも適用できます。
ただし、130℃以下の金型ではKluberplex BEM41-141のようなリチウム系潤滑剤の方が耐摩耗効果に優位性が出てくるため、温度により使い分けが必要となります。
使用上の注意
防錆剤の除去
アガトン社製金型用ガイド部品には防錆油を塗布しています。
潤滑剤と他の化学製品との混合は潤滑剤の性能を低下させる恐れがあります。
金型の組付け時には防錆剤を除去してから潤滑剤を塗布してください。
フッ素系潤滑剤への異種潤滑剤の混入
フッ素系潤滑剤への鉱油および他の合成系などの異種潤滑剤との混合は絶対に避けてください。フッ素系潤滑剤の優れた性能が発揮されない恐れがあります。
フッ素系潤滑剤の優れた性能を発揮するには、潤滑箇所から油、グリス、防錆剤、ゴミなどを完全に除去する必要があります。
油、グリス、防錆剤の除去は、それぞれに適した石油系などの溶剤を洗浄剤として行ってください。
洗浄は潤滑部分だけでなく、潤滑剤を塗布するときに使用する容器、グリスガンなどのフッ素系潤滑剤が触れるもの全てに行ってください。
洗浄後、フッ素系潤滑剤を使用する前にエアーブローを行うか、ドライヤーを用いるなど、洗浄剤が残らないよう必ず乾燥させてください。
SDS (製品安全データシート)
ご使用の際は必ずSDSを一読の上、ご使用ください。
各製品のSDSは当社にお問い合わせください。
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