プレスのストロークとリテーナーのストローク
プレス金型や射出成形をする際に使用する設備によりストロークが異なります。そして金型のサイズ、プレートの厚みも異なる為にリテーナーの長さの判断基準に迷うという事が金型設計においてよくあります。プレーンガイドの場合、プレス機のストロークが30mmであるならばガイドポストが30mm動いて下死点に来た際にはブッシュの中にガイドがすっぽり収まっているというのが理想です。しかしボールガイドやローラーガイドなどリテーナを使用する場合にはリテーナーのストロークも考慮する事が必要となります。ベアリングを使用したボールガイドやローラーガイドではプレス機や射出成型機のストロークに対し移動量が1/2となります。
上の図はリテーナーのボールがガイド摺動時にどのように動くかを示したものとなります。ガイドポストが1ストロークしブッシュは動かない時、ボールはW1とW1’及びW2とW2’の間を往復する形になります。これはベアリングを介すると接触する箇所がガイドポストとブッシュではそれぞれ1/2のみとなります。これはベアリングのサイズが変わった場合もリテーナのストロークは同じです。もし球が大きくなった場合は小さいサイズのボールでは1回転だったものが1/2の回転に減るといった具合です。これは金型上では上死点ではリテーナはどの位置にあり、下死点にはリテーナはどの位置にあるかという位置把握の為には「リテーナは1/2の移動量である」という概念を頭に入れておく必要があります。
ガイドがストロークするとリテーナは1/2移動するという事を書きました。それを金型上ではどのように動いているのかを見てみます。
前項ではガイドが動くとリテーナは1/2動くというお話をしましたが、メインガイドとサブガイドでは動く箇所が違います。メインガイドではパンチプレートが上死点から下死点に向かいます。つまりガイドの構成部品の中ではブッシュが下方向に動き、その動作に作用されたリテーナが1/2の移動量で動く形となります。一方でサブガイドではストリッパプレートに固定されたストリッパ固定ガイドポストが下死点へと動き、ガイドポストの動きに作用されリテーナが下方向に動きます。基本リテーナが動く方向は動く方向に追髄するようになっています。
下死点におけるリテーナーの位置
下死点ではリテーナがブッシュに入っている状態になるようにリテーナの位置を考える必要があります。下死点に来ることでパンチがワークを曲げ及び打ち抜きの加工をすると材料の硬さによる応力がパンチプレートに伝わりリテーナが入っているならばその偏荷重がボールガイドのボールにも伝わります。つまりボールが偏荷重を受けますので1列でもズレが発生するとその分、残りのボールに掛かる偏荷重が多くなってしまいます。下の図では仮に100個のボールが入ったリテーナがズレてしまい1列ブッシュにボールが入らなかった時の負荷の違いを示しております。左の事例では全ての荷重を100個のボールで受けますが、右の図では1列ズレていると80個のボールで荷重を受けなければならなくなってしまいます。下の図では右のリテーナは80個のボールに1.25倍の荷重が掛かってしまいました。結果、偏荷重が増した結果、リテーナーの鋼球は摩耗し寿命が短くなってしまうという事にも直結します。リテーナーの摩耗は精度に直結します。下死点においてパンチのXYにおける精度が悪くなり、そのため下死点を監視してズレが発生しないか。そしてズレが発生したのは何が原因か。ボールの摩耗で保持力が弱くなり、リテーナーが引き抜かれてズレが発生した。ブッシュに設置したスプリングの減衰が強すぎた。など要因に併せて対策が必要になります。金型を組み付けてプレス機に設置したあとは低回転で回して下死点にリテーナーがどの位置に来ているかのチェックが必要です。
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