金型用ガイドの種類
金型にはどのようなガイドの種類があるのか?
金型用ガイドの目的は位置決めです。材料に加工をする際に狙った箇所にちゃんとパンチが打ち抜けるようにする事です。プレス機自体にもある程度の精度がありますが、プレス機の基本は回転運動を直線運動に変換する事です。そこでは挙動が発生し、また金型が受ける荷重や材料の応力により狙った位置決めが出来ない事があります。そのため、ガイドで様々な偏荷重に晒されても狙った精度を出す為に金型用ガイドは発展、進化してきました。
一般的な金型用ガイドは3種類に分類されます。プレーンガイド・ボールガイド・ローラーガイドです。 以下にそれぞれの特徴を表にしてまとめました。表をご覧頂くとガイドにより一長一短があります。
プレーンガイド | ボールガイド | ローラーガイド | |
剛性 | ◎ | △ | ○ |
高速性 | △ | ◎ | ○ |
精度 | △ | ○ | ◎ |
焼き付き | × | ○ | ○ |
ロングストローク | ◎ | ○ | ○ |
価格 | ◎ | ○ | △ |
耐摩耗性 | × | ◎ | ◎ |
プレーンガイド
プレーンガイドは、比較的長軸で複合振動(スラスト方向 / ラジアル方向) のあるガイドに適しております。また組み付けが非常に容易、そしてロングストロークな金型に向いている点がメリットです。
ストローク摺動速度は最大30~60m/min程度となります。
ブッシュは①スチールタイプ②無給油ブッシュ(固体潤滑剤配合タイプ、オイレスブッシュ)③給油ニップルタイプ④内径コーティングタイプなどメーカーにより方向性があります。負荷が小さい場合や小さい金型ではオイレスブッシュは価格も安くシンプルな構造になる為人気です。高速を目指す場合や高負荷になる場合は潤滑剤を使用します。潤滑をするかしないかで最大ストローク速度に変化が生じます。また潤滑剤は焼き付き防止成分が配合された潤滑剤が必要です。
プレーンガイドのデメリットはクリアランスがある事で精度が得られない事と焼き付きが生じることがしばしばトラブルとなる事があります。一方でクリアランスを極力詰めた高精度プレーンガイドもありますが、カジリが発生しやすく金型を組み付けるのが非常に困難になるなどの場合があります。
ボールガイド
ボールガイドは、クリアランスが無い為高精度が求められる場合に適しております。摺動部が滑らなか動きのおかげで高速プレスの打ち抜きや金型の組み付けが容易になります。一般的にはアルミ製のボールリテーナが普及していますが、POM(ポリアセタール樹脂)製リテーナは滑り性がよく粉塵の発生が抑えられる事からクリーンルーム向けなどに採用されています。
また高温度な金型では線膨張率の低い真鍮製のリテーナが用いられます。市場の流通性は低いですがより高い温度に対応するPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製のリテーナーも存在します。ホットスタンプなどの成形温度は400~800℃に達しますが、ガイド自体がこの温度に達するとマルテンサイト組織が焼き戻しされてしまうので高温度な金型ではガイド自体が耐える温度としては200℃前後が目安です。真鍮製のリテーナーも線膨張率が小さく高温度下に適した材料となっております。
ローラーガイド
ローラーガイドは、ボールガイドと同じくクリアランスが無い為高精度が求められる場合に適しております。ボールガイドとの違いは「剛性」です。点で接触するボールに比べローラーは線で接触する為、ベアリング自体にかかる偏荷重を受ける面積が広く、その結果弾性変形も小さくなり、精度上の恩恵が得られます。
ローラーに関しては様々な形のガイドが存在します。①鼓型タイプ(アガトンローラー、プロファイルローラー)②ニードルタイプローラー③楕円形状タイプ(アークローラー)です。特徴としては以下の通りとなります。
各ローラーガイドの特徴
ベアリング形状 | アガトン ローラー | プロファイル ローラー | ニードル ローラー | アーク ローラー |
ガイドの不回転性 | ○ | ○ | ○ | ○ |
ガイドポストの形状 | 円柱 | 円柱 | 多角形 | 円筒形 + 溝形状 |
剛性 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
スピード | ◎ | ○ | ◎ | ◎ |
ローラー形状の種類
上記のベアリングに共通する特徴としてはボールよりも接触面積及び接触点が大きく剛性を持つこととベアリングがスラスト方向のみに摺動しラジアル方向には動かない「不回転性」を有しているのが特徴となっています。プレス機自体のXYの位置精度を更に0に近づけるのが金型のガイドの役割ですが、プレス機の挙動によりXY方向にパンチプレート、ストリッパープレートに挙動が発生し、パンチの位置精度がそんなに出ていないという事があります。そのような金型にローラーガイドは向いています。
ベアリングには低予圧タイプがポイントとなる製品が多くなっております。予圧が小さいとベアリングのスキュー摩耗が防げる。スムーズな動きが得られるなどのメリットある一方でデメリットとしては寸法公差が非常に狭いがためにガイドの勘合合わせ(マリッジ)が必要となり、リテーナーが摩耗した際にはリテーナーだけの交換ではなく全交換となってしまうのがデメリットです。交換の可否については多くのメーカーが全交換推奨となっています。
リテーナーの交換となった際、ガイドブッシュもガイドポストも当然摩耗が考えられます。そうなると、リテーナーを交換しても新品とは同じ予圧にならないと考えられます。ベアリングが新しいのに適切な予圧が得られていないとしたらガイドポストやブッシュの摩耗が考えられます。
そのような状況で使ってもリテーナーの寿命は半分となってしまう事もあります。特にローラーはガイド単価が高い為、メーカーは用法をごまかして使われるよりはパフォーマンスの上がる適切な使い方をしてもらいたいと考えます。
ローラーガイドによってはボールガイドとの互換性がある場合があります。これはボールリテーナーとローラーリテーナーが同じ予圧設定になっており、ボールガイドからローラーガイドに変更できます。ボールガイドで運用している金型で偏荷重によりボールのヘタりが早かったり、製品のバラつきが多い時にはリテーナーをボールからローラーに変更することで剛性改善やバラつきを抑える事が出来ます。詳細な説明はローラーの項目で実施致します。
ローラーガイドは他にケース材料としてはエンプラ(POM、PEEK)アルミ合金真鍮、黄銅という違いがあります。ケースの材料の違いとしては上記ボールリテーナーの項での内容と同じです。
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